【本】伊勢詣と江戸の旅と絵図に見る伊勢参り
江戸時代の生活文化を紹介する本はすきなジャンルで、図書館や書評で見つけるたびに読んでいます。今日は、伊勢参りを主題にした本を二冊紹介します。 一冊目は、「伊勢詣と江戸の旅」金森敦子著です。 この本は、今年の5月に紹介したおなじ著者の「関所抜け江戸の女たちの冒険」の続編のような本で、江戸時代に流行した伊勢参宮を通して、江戸の庶民の姿を描きます。 伊勢参りといえば、弥次さん喜多さんの膝栗毛が頭に浮かびますが、これは滑稽本ですから、面白おかしく書かれており、実態は何年も掛けて旅費を貯め、お上に願いして道中手形を手に入れ、当然何百キロを徒歩で(途中駕籠や馬には乗ったでしょうが)酷暑の中、悪天候の中を目的地を目指します。 病気になったり路銀が尽きれば、即く死の恐怖におそわれかねません。 でも伊勢の町は別天地であったらしく、宮川の渡し場まで出迎えられ、御師の家まで駕籠で運ばれ、山海の珍味を味わい、絹の布団で眠り、弁当と案内人付きで外宮・内空・朝熊山・二見浦を巡拝し太太神楽を納め、夜は夜で古市の遊郭で伊勢音頭を見て、遊女と戯れて、最後は土産付きで、宮川の渡し場まで見送られる。 現在の観光パックツアーとほとんど同じような仕組みがニ・三百年も前に繰り広げられていたようです。 本書は学術書ですから、当時の物価を現在の円に換算して旅の費用を割り出すといった試みもされています。 街道歩きが趣味の方に、往時を知る入門書としてお勧めします。 詳しくは、こちらへ |
二冊目は、「絵図に見る伊勢参り」 旅の文化研究所編です。 この本は、江戸時代後期に刊行された『伊勢参宮名所図会』を主要場面の絵解き、(描かれた風景や人物の説明や本文の現代語訳つき)とそれを主題にした論文からなっています。 趣旨は一冊目とおなじですが、テキストが絵入り本のため取っ付きやすくまずこの本を読んで、当時の旅の様子の概要を頭に入れてから一冊目を読んだほうが理解しやすいでしょう。 京の三条大橋を振り出しに、草津から鈴鹿峠を越えて、関の追分から参宮街道に入り、津、松坂を経て、伊勢の町に至る。そして伊勢巡拝の様子。 明治の国家神道の政策で伊勢神宮が神格化される前は、庶民でも玉垣の中に入って、かなり間近に御神体を拝謁できたとか、神域の中にも民家があり茶店やみやげ物店を開いていたなどという絵図を見ると、現代人の伊勢参宮のイメージとはだいぶん違っていたこともわかります。 書かれている内容も絵のため誇張や省略もあるのかもしれませんが、やはりビジュアルな名所案内は、昔も今も旅に誘ってくれるのは、間違いないようです。 詳しくは、こちらへ |
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