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2012.07.04

【本】京都 岩倉実相院日記 (管 宗次 著)

岩倉つながりで、岩倉実相院に関する本を紹介します。

Iwakura_nikki 「京都 岩倉実相院日記」 管 宗次 著 です。副題に「下級貴族が見た幕末」とあるように、岩倉実相院の事務をつかさどった下級貴族が幕末から明治維新の京都の世情を書き残した日記を紹介する本です。

岩倉実相院は、このブログでも春のさくら、秋のもみじとよく紹介していますが、岩倉の集落のシンボルともいえる門跡寺院です。現在は単立寺院ですが、元は天台宗寺門派(三井寺の末寺)でした。

このお寺に260年の長きにわたって、坊官とよばれるお寺の事務職員のような僧侶であり、下級貴族でもあったひと達によって書き継がれた日記が、百年ぶりに平成10年に発見されました。

この本は、その膨大な日記の最後の期間の、幕末から明治維新までを書いた、松尾刑部卿法印親定(まつおぎょうぶのきょうほういんちかさだ)の部分をおもに取り上げたものです。
2012_04_iwarura_02(春の実相院 : 岩倉川の桜並木。岩倉駅前からこの川沿いにさかのぼっていくとお寺の前にでます。 2012.04)
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この松尾刑部というひとは、今風に言えば宗教法人の事務長といった役どころで、お寺の事務を取り仕切っていました。なかなか筆のたつひとで、またすこしユーモアを解し、腰も軽く-悪く言えばおっちょこちょいの慌てん坊 と、管理人そっくりの愛すべき性格-で、お寺にまわってくる回状や訪問者の応対の記録はもちろん、京の町へ出かけていって、いろいろとニュースや噂をかき集めては、小まめに筆記しています。

当時は、バスも電車もありませんから、京の町のたとえば御所へ行くにしても歩いて2時間は掛かったでしょうから、町なかにあった里坊と呼ばれる出張所のようなところに泊まって、市内を歩き回ったようです。

内容は、幕末ですから、やはり尊王攘夷派と佐幕派の対立によるテロ・暗殺・風刺・落書が見所(?)です。尊攘派も佐幕派も、相手の首謀者にテロを仕掛け、暗殺し、その首を三条河原にさらしたり、切り合いしたりしています。

門跡寺院の中には、粟田口の青蓮院のように、門主自らが、尊王攘夷の嵐の中に飛び込んでいかれる血の気の多い(失礼)お坊さんもおられたようですが(笑)、実相院は当時は無住といって、門跡さまは空席になっていたようで、特に政治的な色彩もなく、純粋に(?)坊官の好奇心から、噂をかき集めていたようです。
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Iwakura_kaeru01a (夏の実相院 : 大雲寺のモリアオガエルのたまご。大雲寺は実相院のお隣にあるお寺で、源氏物語の若紫の巻のなにがしの寺のモデルとされています。 2011.06)
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それでもやはり末席とはいえ貴族の一員、あずまえびす(失礼)の支配を逃れて、平安の昔のように天子さまのご支配の時代がくるのは望んでいたようで、幕府方を批判・中傷する落書を写したり、自分で風刺文(絵入り)を作ったりもしています。

幕末の岩倉といえば、岩倉具視の旧跡が今も残ってますが、岩倉公とのやりとりの記録もありますが、やはり尊攘派の首魁と付き合うのは危ないと思ったのか。境内に住まいを与えながら、つかず離れずといった応対をしていたようです。

さて、ご承知のように、明治維新になって得をしたのは、一部の薩長土肥の尊攘派の藩士と高級公家だけで、その他の普通の藩士や貴族たちは、わずかな退職金がわりの債権をもらっただけで、多くは士族の商法に象徴されるように没落していきました。

実相院も、岩倉公に借家をさせたカイも無く(笑)、廃仏稀釈の嵐でそれまでの特権をすべて取り上げられ、坊官たち事務員も寺を追い出されました。この日記の記録者の松尾刑部の最後も、じつはよくわかっていません。あるいはどこかのお寺か神社に潜り込んだか、巡査や教師になって明治を生き延びたのかもしれませんね
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Iwarura02_2 (秋の実相院 : 紅葉の表門。昨年のもみじの照りはイマイチでした。今秋はすばらしいことを願ってます。 2011.11)
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と、まあ一気に読後感を書きましたが、実際土日の二日間で読み終えました。地元のなじみのお寺のことだけあって、内容もよくわかり、面白かったです。

梅雨の実相院は、青葉もみじが色濃くなりお庭は雨でしっとりと濡れ、参拝者も比較的すくなく(紅葉の頃は押すな押すなの混雑)ゆっくりと拝観できる良い季節です。

夏休みの京都旅行のスケジュールに岩倉を組み込んで見られてはいかがでしょうか? 都合がつけば、あちこちご案内しますよ
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Iwarura01 (冬の実相院 : 岩倉具視旧邸の初雪。岩倉の冬は厳しいです。 2012.01)
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(次回は、八幡市の松花堂庭園・美術館を訪ねます)
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コメント

こんばんは^^
床もみじ&青もみじ
たぶん、一番の見頃という時をねらって
早起きして行きましたよ。豊中から
それも、関西時代の自慢のひとつです

>> くまモンママさんへ

こんにちは。実相院の床もみじも見られましたか。
さすがですねぇ

今の時期は、曇り空で光量がすくないので、
床は濃い抹茶色ににぶく光ってます。
お庭のほうは、いぶし銀みたいです。

また京都へこられる折は、寄ってください。

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