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2013.01.23

【本】食堂車乗務員物語 宇都宮照信 著

交通新聞社新書の1冊です。 

Syokudosya01 著者の宇都宮照信氏は、我ら鉄道ファンの間では、九州鉄道記念館の副館長さんや、鉄道雑誌の常連カメラマン・執筆者としてよく知られている方です。

ながく日本食堂に勤務され、食堂車や駅構内の食堂に調理師として、活躍されてました。この本では、昭和44年の入社から10年ほどの若い頃の食堂車乗務の思いでを主に書かれてます。

「料理を作りたくてコックになったのではない。一日中、汽車に乗っていたかったので食堂車のコックになったんだ。」と、本のあとがきに書かれているくらいの、筋金入り(笑)の鉄チャンの書かれた本ですから、内容も料理や食堂車の仕事のことはもちろんですが、随所に、「やっぱり鉄チャンの見るところは違う(笑)」と思わせる記述があって、楽しかったです。

内容は、5章にわかれていて、

最初に、「食堂車の誕生から今日まで」として、日本の食堂車の通史が書かれています。
ここは、知ってる話(失礼)なので、ざっと読み飛ばし。

2章は、「急行食堂車の料理/石炭レンジ」の章があって、著者が入社してはじめて乗務する、京都~長崎間の急行雲仙の食堂車、オシ17の話がでてきます。

はじめに食堂車のクルーの紹介があります。食堂車の男性乗務員は、責任者の調理係を「チーフ」、調理助手を「スケさん」、配膳係を「パンちゃん」(パントリーの略)と呼び、女性は、会計係が先輩格で「会計さん」、以下「1級さん」「2級さん」「3級さん」の3名のテーブル係と車内販売担当の「車販さん」の9人ほど乗り込んだそうです。

当時は、まだ食堂車では石炭レンジを主に使っており、その取り扱いによる悲喜こもごものエピソードは、本の副題「あの頃、ご飯は石炭レンジで炊いていた」になるくらい印象深いものみたいで、ほかの章でもよく出てきます。

3章は、「特急食堂車の料理/電気レンジ」です。

急行との対比で、やっばり格上のスタッフとメニュー、それに電気レンジで「スイッチひとつで煮炊きができる」のが便利と書かれてます。

1970年代中頃は、食堂車の全盛期で、全国の新幹線・特急・急行では、大勢のお客さんが食事に訪れたようです。

4章は、「電車急行のビュッフェでチーフに」です。

昭和47に、「北陸トンネル列車火災事故」があり、原因とされたオシ17形食堂車が一斉に連結中止となり、筆者は、山陽線や九州各線の急行電車のビュッフェのチーフに転任されます。

当時のビュッフェでは、うどんやそば、すしなどのコーナーが軽食・喫茶コーナーと並んであり、車内で小腹を満たすことができました。調理は電子レンジでチンするのが多かったみたいですが、今なら手抜き(失礼)といわれそうな、レトルトをチンして出来上がりも、「当時は家庭に電子レンジが普及してなくて、目新しい調理法と思われた。」と書かれているのが面白いです。

最後は、「食堂車乗務員の車上生活」

ここでは、長年の食堂車コック生活のいろいろな自慢話や失敗談などのエピソードがでてきます。
有名な?「ハチクマライス」や、やはり食堂車のウェイトレスだった奥様となんとSLの前で結婚式をあげられた話なんかが載ってます。
*

私は、残念ながら食堂車で食事をした経験が1回もありません。子供の頃は、「食堂車なんて贅沢」と親は思ってたようですし、社会人になりある程度余裕が出来た頃には、こんどは食堂車自体がどんどん減っていって、ついに食べ損ない(笑)ました。

食堂車をよく利用されてるかたも、そうでない方も楽しめる本です。一度読んで見られることをお勧めします。
*
Yamaza28
高槻駅を通過する、急行「雲仙」号。すでに食堂車は外されていますが、伝統のA寝台車+B寝台車+グリーン車+普通車指定席+普通車自由席+荷物車+郵便車と繋いでいた頃です。 (1974/12/17)
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お帰りは、このバナーから「本館」へどうぞ。

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コメント

食堂車、鉄道の楽しみでしたよねー。さくら や あさかぜ のブルトレでは、寝台の予備使用以外に客用の椅子を並べて仮眠をとっていたなんて話を聞いて、驚いた記憶があります。
値段が高く、サンドイッチやカレーが主だったと思いますが、それでの何事にも代えがたい時間がたまらなかったです。今なら、北斗星、下りの朝食時間帯に、大沼公園越し駒ケ岳の風景見ながら、が最高と思います!10年くらい前のことですが、また行きたいと久々に思いました。記憶を思い出すきっかけ、ありがとうございました。

>> キハ58さんへ

今や、普通の食堂車は、寝台列車とともに記憶の彼方に走り去って
しまった感じですね。

イベント列車などで、走り去る風景を見ながらコーヒーを飲む時などは
「あっ~、贅沢な時間だ。」と、思ってしまいます。

今って、食堂車のあるのは カシオペアと トワイライトくらいですか?
新幹線に あってほしいと思いませんか?私は いつも新幹線でお弁当を食べるので そう思ってます・・・。

こんばんは
最近少し温かいですね
子供の頃父が出張で、新潟や北海道へ行っている時
寝台車に乗って遊びに行きました(*^。^*)
でもご飯は、お弁当を買って食べてました
それがまた楽しみの1つでね
最近は余り電車にも乗りませんし、旅行も車で行くタイプなんですけど
なかっちょさんのブログを見る様になってから、
電車の旅にも行きたくなりました寝台車に乗って食堂車でご飯を食べてみたいです
中々時間が無くて結局はいけませんけどね(~_~;)

>> まぶちょんさんへ

おはようございます。
あとJRで食堂車が走っているのは、北斗星がありますね。

近鉄の名阪特急にも、むかしは喫茶コーナーがあったみたいですけど
この秋の登場する伊勢志摩行きのリゾート特急には、また喫茶コーナー
が復活するみたいですよ。

これなら、名古屋や大阪・京都からコーヒー飲みながらお伊勢さんに
いけそう

新幹線の食堂車の復活は、残念ながらむつかしいみたいですね

>> na nori さんへ

関西から列車で北海道に行くなら、やはり奮発して、
トワイライトエキスプレスで行きたいですね。

今の時期なら、日本海側は雪景色が見られるし

1969年当時のオシ17使用列車は
「十和田」2往復、「きたぐに」、「瀬戸」(1往復だけ)、「出雲」、「安芸」、「霧島」、「雲仙」だけでした。
70年10月に「安芸」が特急になり、食堂車は「十和田」に移り、マシ35を置き換えました。
72年3月に特急になるか、外されるかで、72年11月の段階では「十和田」1往復と「きたぐに」だけ、使用は5両だけになってました。北陸トンネル事故の原因は、10系客車のモロさ故の漏電だったようですが。

その段階だとすると、「ゆのか」「かいもん」のサハシ455だったんでしょうか。山陽地区も本州からくる「つくし」のみ、それも大阪~柳井のみでした。
今は、甲子園球場のカレーライスだってレトルトパックを温めて出してますよ。

私も、知り合いに日食の元こっくさんがいますよ。リクエストがあれば、末期(84年位)の話を致しますが。

>> なにわさんへ

本には、「玄海」、「つくし」、「ぎんなん」、「はやとも」、「ゆのか」、「しらぬい」に乗務した。
車種は、「サハシ455」と、書かれてますね。

食堂車は、私の知らない世界(笑)なので、面白いお話を聞かせていただければ
幸いですm(__)m

「しらぬい」があるので、72年3月以前からの乗務ですね。
「ゆのか」  博多~大分(3往復)
「ぎんなん」 博多~熊本
「はやとも」 広島~博多
「しらぬい」 岡山~熊本
「つくし」   大阪~博多(1往復+季節1往復)
「玄海」  名古屋~博多
1968年10月~1970年9月の南福岡の475系の使用電車全てです。
本州乗り入れは大阪側と乗務交代があったのかもしれませんね。
そうそう、昔は電気レンジより石炭レンジのほうが火力があると言われてたらしいですね。
今もIH調理器を信用しない人の理由になってますが。

こんばんは.皆様ご無沙汰しております.

食堂車に乗っている中の人は外の様子を車窓風景意外知らないようで,(当たり前か)
以前架け替え工事直前の餘部鉄橋に行った際
元「まつかぜ」のウエイトレスだったというおば(あ)ちゃんが
「あら~、下から見たらこんな風になってるのね~、そりゃ揺れるわけだわ~」
と納得してつぶやいていらっしゃいました。

交通新聞社のこのシリーズ、確か800円台で少々内容の割には高い気もしますが、
この本は買ってみようかと思います。

>> ギヤジローさんへ

こんばんは。お久しぶりです。

食堂車の仕事は、なかなか厳しいと聞いてましたが、実際の体験談を
読むと、「ゆっくり車窓を楽しむ余裕もなかった。」
と、いうのもうなづける話ですね。

交通新書は、さすがに業界紙が版元だけに、いろいろと掘り下げた
テーマもでてくるので楽しみにしてます。

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