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2017.05.05

京の春の散歩(その14)晩春から初夏に移るなりひら寺

4月30日に、乙訓寺の牡丹苑を見たあと、乙訓丘陵を越えてなりひら寺(十輪寺)までハイキングしてきました。
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境内にはいると、さすがに伊勢物語の主人公とされる業平卿が晩年を過ごしたと伝えられる山寺だけあって、優雅なたたずまいです。

世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし

 (古今集 巻1 春歌上 53番、伊勢物語82段)

にちなむ業平桜はすでに葉桜でしたが、渡り廊下を越えて伸びる枝ぶりは見事です。

ちなみに、この和歌は古今集の詞書や伊勢物語によれば、業平が惟喬親王のお供で交野に狩りに行き、いまの枚方市の京阪御殿山駅近くにあった渚の院で花見宴を開いたときに詠まれたそうです。
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受付での案内に従ってお寺の裏山に登ります。若葉と黒い甍の取り合わせが美しいです。
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そこには、杉の大木に守られるように、業平卿の墓がありました。

 つひにゆく道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを

 (古今集 巻16 哀傷 861番、伊勢物語125段)

元慶4年(880年)5月28日卒去、享年56歳。命日の5月28日は、業平忌の法要が行われます。
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さらに上ると、こんな山の中に塩竃の跡がありました。

 大原や小塩の山もけふこそは神世の事も思ひいづらめ

 (古今集 巻17 雑歌上 871番、伊勢物語76段)

忘れがたき恋人二条后(若いころ業平が盗み出して、芥川まで逃げる話は、伊勢物語6段に書かれ、有名ですね(^^♪ )が、近くの大原野神社に参られたときに、塩竃から紫の煙を上げて、昔の忍ぶ恋を確かめ合った

と、伝えられます。
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山を下り、本堂に向かうと新緑の季節に真っ赤に紅葉した楓が

 千早ぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは
 (古今集 巻5 秋歌下 294番、百人一首17番)

この百人一首でも知られた歌-落語のネタやアニメ映画になるくらいですから-を意識しているのは、間違いないでしょうね(^^♪
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本堂には、本尊の延命地蔵菩薩がまつられ、回りの壁には仏画と並んで、業平の肖像画が掛けられています。

六歌仙や三十六歌仙絵では、弓矢を背負った武官(史実では右近衛中将に任官)姿が多いですが、ここでは宝塚ばり の貴公子姿をあげておきましょう。

 月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして
 (古今集 巻15 恋歌5 747番、伊勢物語第4段)
これも、引き裂かれた恋 を嘆く歌ですね。
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本堂の横には、茶室があって、六歌仙の屏風絵が飾られています。

美男子とくれば美女でしょうから、小町と業平の相聞歌を載せておきます。

秋の野に笹分けし朝の袖よりも あはで寝る夜ぞひちまさりける
  <業平>
みるめなきわが身を浦と知らねばや離れなで海人の足たゆく来る
  <小町>
 (古今集 巻13 恋歌3 622・623番、伊勢物語25段)

詳しい解釈は、ネットで調べてもらうとして(^^; 早い話、小町は業平をお断り(^-^)するわけですね。

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伊勢物語の世界にどっぷり浸れて、心の洗われるひと時でした。山道を歩いてきたかいがあったというものです(^^)
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3月の梅見とともに歩き始めた、春の散歩ですが、4月最終日をもって打ち止め、次回からは初夏編をお送りします。

続けて読んでやってくださいね(*^_^*)
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(次回は、ギャラリー巡りです)
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お帰りは、このバナーから「本館」へどうぞ。

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コメント

こんにちは

いいお天気ですね
お寺のたたずまいも
味わいがあって、落ち着きます。
歌人にゆかりのお寺というのも
納得です

御殿山の渚の院での歌も
昔よく前を通っていたので
親しみに似たものを感じます

>> slowmotion さんへ

こんにちは。

お寺の方の話では、「桜のころは、ものすごい混雑で」ということでしたが、
新緑も捨てがたい魅力に溢れてました。

渚の院のあとは、一度いきましたが、保育所と集会所になってて、中に入れなくて
残念

塩竃の跡,
エピソードを知ると
なんだかとても秘密めいて特別なものに見えます。
素敵ですね。風流♪

六歌仙の屏風絵を見ることが出来たり、
やはり素晴らしい歴史と文化。


>> ホシノさんへ

なりひら寺と花のお寺(勝持寺)を回るのがひと頃ブームでした。
最近は高速道路にICが近くにできて非常に行きやすくもなりました。

ただ、大勢押しかけられると ひなびた山寺の風情が
失せるようで心配です(^^)

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